西暦2043年

私が最もよく一緒に飲みに出かける友人Hは実にオトコマエな男である。40才にもなって貯金はゼロ、趣味は飲む、打つ、買う、まぁそんな男だからこそ私の最も気が合う友人なのであろうが。

その友人Hが結婚することになった。相手は2才年下で付き合い出してかれこれ3年になる。2人は今年に入った辺りから結婚に向け色々と準備を始め、そして新居も探していた。

先日Hと会ったとき、Hはいきなり「家を買った」と言い出した。結婚と同時に新居を購入とは思い切ったことをするもんだと感心しながら詳しく話を聞いてみると実家の近くに築11年の中古の出物があって、2人で見に行くと彼女がその家をえらく気に入ったので契約したという。値段は3600万円だとか。

Hに貯金がないのは知っている。Hの給料がどの程度かもだいたい知っている。なかなか思い切った買い物をするな〜と驚きながら 「ローンの審査はもう通った? ローン生活はしんどいぞ〜」とアドバイスしてやるとHは事もなさげに 「おぉ、ローンの審査はもう通ったよ、支払いは月々10万円弱でボーナス払い無しやからまぁなんとかなるわ」と答えた。

月々の支払いが10万弱でボーナス払い無しとは少しおかしいな〜と思いながらローンの期間を訊ねてみると、なんと35年ローンを組んだという。

おぃおぃ、大丈夫かよH。40才のおっさんが35年ローンを組んだら払い終わるとき何歳になってるか知ってるか? しかしそれにしても、35年ローンを組もうと思ったHもHだが、その審査を通した銀行もいったい何を考えているのだろう。

Hは「大丈夫、大丈夫、もしオレが死んだら保険でローンを清算できるし」とのんきに笑っていた。いや、そうじゃなくって・・・・・。 おい、本当に大丈夫かぁ? 払い終わるのは西暦2043年で、オマエ75才になってるんだぞ!!