次々と課題が

 私がまだ若かったころ、年を取れば人生は楽になるものだと思っていた。子供のころは日々学校でのことに煩わされた。勉強しかり、人間関係しかり。思春期に入ると更に悩みは多くなる。しかしいつもこう考えていた。

『働き始めて社会人になれば自由になることが増えるし悩みも減るだろう』

 しかし、いざ社会人になってみると仕事を覚えることだとか、新たな利害が絡む人間関係だとか、若い頃とはちがう大人としての異性関係だとか、課題は更に複雑化した。

 しかしその頃もこう考えていた。

「もう少し年を取って、そう、大人といわれるような年齢になれば人生は楽になるだろう」

 しかしだ、人生が楽になるどころか課題は更に複雑化して私程度の知能では解決不可能なくらい難しくなる。結婚や子育て、マイホームの購入と一歩間違えば破滅を招きかねない大きな関門がある。私は頭が弱かったせいかそれらの課題に遅れながらではあるが取り組んだり見切りをつけたりしつつ必死に取り掛かった。そして考えた。

「おそらくこれが人生最大の決断だろう。あとはまぁ余力でなんとかやっていけるのだろう」

 しかし人生はそんなに甘くはない。50を越えた今でも新たな課題は次々と与え続けられる。今までに経験したことのない新たな課題だ。

 今私が直面している問題は親との関係をどんなふうにして、そしてどう看護したり看取ったりするか。あと終の棲家はどうするのか。このままこの家に住み続けるのか、それとも年寄りが暮らしやすい家に今のうちに住み替えるのか。そして、おそらく私が先に旅立ちこの世に残すことになるであろう妻に対してなにを残してやるか・・・。

 いつまで経ってもわからないことだらけの人生だ。いったいいつになれば楽になるのだろう。