寿司屋とタクシー

むかし、どこかの国の総理大臣が『ホテルのバーは案外安い』と発言し頻繁に利用していたらしい。値段のことはそれぞれの懐事情や金銭感覚が絡むので何とも言えないが、私はホテルのバーというのは性に合わない。どちらかというと、ホテルの部屋で缶ビールなんかを飲む方が落ち着くし、その缶ビールにとツマミにしたって備え付けの冷蔵庫やルームサービスを利用するよりも、コンビニや自販機で買った物の方が自分らしいと思うし、その程度の金銭感覚は持ち合わせている。

もちろん私だってホテルのバーで飲んだことはあるが、どうにもあの過剰な気遣いや雰囲気が苦手である。もちろん向こうは仕事としてそれをしているのであるから遠慮するのはおかしいかもしれないが、私としてはもっと放っておいて欲しいのだ。私は自分の身の丈というものを知っているつもりだ。

そしてホテルのバーと同じく、というか、もっと苦手な物が寿司屋とタクシーだ。寿司屋というのは客1組もしくは2組に1人くらいの割合で板前が付いてくれる。私が座って飲み食いしている間中、板前はカウンターの向こうで立って働いている。タクシーも同じで、私が移動するために運転手1人が私のためだけに運転をしてくれている。 私は人1人をそうやって使えるほど立派な人間じゃない。

寿司屋とタクシーの利用は、どうにも身の丈に合わないことをしているようで居心地が悪いのである。