長沢さん

私が今までに一番熱心に読んだと思われる小説、村上春樹の「ノルウェーの森」という本の中に長沢さんという主人公の先輩が出てくる。この長沢さんは東大に通っていて女にもモテ、主人公と暮らす寮ではリーダー的立場と鼻持ちならない男である。そして私には、様々な変わり者が登場する本書の中でも際だった変わり者であると感じた。

卒業を間近に控えた長沢さんの部屋に主人公が訊ねていくというシーンがあった。長沢さんは外務省への就職が決まっていて大学卒業と同時に寮を出ることが決まっている。主人公が長沢さんの部屋を訊ねると長沢さんはラジオの外国語講座スペイン語がかなにかの放送を聞きながら独学で勉強していた。

私などの考えからいうと、何故 大学生活が終わろうとしているときに独学で勉強なのか。何故、立派な就職先が決まって間もない時期に勉強なのか、まったくもって理解できない。そりゃあそうした方が良いにきまってはいるが、それにしても・・・・。

似たような話が身近にもあった。先日 大学に合格した甥っ子は受験が終わった今も新たに参考書を買い勉強を続けているらしい。 何故 受験が終わったのに勉強を続けているのかと訊ねると

『東京に行くまでまだ半月あるから、その間に微分積分をやっておけば完全に理解出来ると思って』

長沢さんだ、コイツ長沢さんだ・・・・。

いったいコイツらの目標はどこにあるんだ!?