先行き不安

 いま現在、それほどお金には不自由しているわけではない。
高速道路の料金を浮かせるために1人のときはなるべく下道を使うとか、飛行機に乗るときはエコノミークラスとか。しゃぶしゃぶを食べるなら牛じゃなく豚だとか、そういう中途半端な貧乏人である。
そして、そういう風に節約をしながら貯金をしたりしている。それは老後の資金だったり病気で働けなくなったときの生活費として、はたまた生活に変化があったりしたとき、それに対応するためだ。

若いころにはこの類の貯金なんてしたことがなかった。私がする貯金はもっとスパンの短いもの。たとえば旅行に行くためとか、クルマを買い替えるためとか、せいぜいが数か月から数年先のことのためにだった。ところが今は10年以上も先、老後の蓄えなんてものを意識している。

なんでそんなことになっているのかといえば先行きが不安だからである。さて、あと何年働いて収入を得ることができるだろうか? あと何年くらい病気をせずに元気でいられるだろうか。老後の生活はどの程度の出費があり、年金以外に毎月いくらくらい必要なのか
まったくわからない。わからないが故に不安なのである。

 「日本の景気が良くならないのはお金を持っている中高年がお金を使わないからだ」という話は若いころからよく聞いていた。そしてそんな話を聞くたびに『年寄りがそんなに金持っててどうするんだよ、金を抱いて死んで行く気か?』とバカにしていたが、自分が中年になるとよく分かる。
この先いったいいくら持ってたらいいんだ? 年金は何歳からもらえるんだ? オレ、いくつまで生きるんだろ??
わからないことだらけだ。 これじゃ心配でお金なんか使えないよ。

そんなわけでなるべく多く、毎月少しでも多く貯蓄しようとは思っているが、そのために犠牲にしているものもある。将来のために今を犠牲にするというのは馬鹿げたことだと思う。なにかこう明確な基準みたいなものがあると良いのだが・・・。