映画『火花』を見てきた

11月から公開されていたので今更感はあるが、それでも小説を読んでNHKでのドラマも見たのでとりあえず映画も見ておかないと、と鑑賞。いや、良かったよ。

とりあえず前提条件として、いまは空前のお笑いブームだということ抜きには成立しない話しです。
お笑いBIG3の1人でバラエティーやドラマでも大人気だった明石家さんまでさえ若い頃はお笑い芸人として地位は低かったように思う。やはり俳優や歌手の方が地位は上で、女優と結婚した芸人なんか他にはいなかったと記憶している。そしてそれでもお相手の大竹しのぶは再婚だったワケだし。
ところが今はお笑い芸人の地位が向上し、芸人を目指す人が極端に多くなった。今の世の中、おもしろいことはカッコイイことであり芸人は人気の職業なのだ、そしてそれゆえ芸人を目指すものが増え競争率は高くなり、そして夢破れる者も多くなった。

そもそも私は漫才というものが好きだった。子供のころにおばあちゃんに連れられて吉本の演芸場に行ったこともあるし、学生時代には漫才ブームというのがありテレビで漫才をみて大笑いしていた。もちろん当時はそれはそれで面白かったのだが今とはレベルが違う。先にも言った通り芸人を目指すものが増えレベルは格段に上がった。漫才のネタは徹底的に作りこまれ間合いやテンポ、言い回しも考えつくされている。こうなってくると売れるためにはさらに大きな努力が必要となってくる。
おもしろい雰囲気を持った人が適当におもしろいことを喋っている、そんなことではとてもじゃないが通用しない。
身を削るようにしてネタを考え、他の多くのことを犠牲にして漫才にかける姿が小説からもドラマ、映画からもよく出ていた。

私の住んでいるところが大阪だからかもしれないが、身近にも吉本の養成所をでたという人が何人かいます。その人たちは普通の仕事をしていて、つまり夢に破れた人たちということになるのだが、そういう人達が身近にいるがゆえによけいにこの作品に思い入れがでるのかもしれない。
そしてもう1つ強く印象に残ったのが漫才というのはコンビでやるもので、同じ夢を一緒に10年間も追いかけるのだからその関係性はあるいみ夫婦以上のものがあるように感じた。

今までは漫才を見て何も考えずに笑っていたのに、こんな作品を見たら芸人の世界の光と影を感じてしまって今迄みたいに無邪気には笑えない面もでてくるワケで。そういう意味ではこの作品のなかで使われていた『笑われたらあかん、笑わさなあかん』というこのフレーズと同じでこの映画も見せていいけない面のひとつだったようにも感じる。