兄と義姉の気持ち

2週間ほど前のことであるが、兄が私に振込用紙を見せ 『銀行に行ったらついでにコレも振り込んどいてくれるか』と言った。それは息子の大学の入学金を納めるための振込用紙であった。私は仕事でほぼ毎日銀行へ行く用があるのでそれを引き受けるのは簡単なことであるのだが、ふと気になって兄の息子はなにをしているのかと訊ねると毎日特に何もしていないという。

『それなら本人に行かせたら。親に大きな金を使わせるんだからその程度のことは自分でさせた方が有り難味が分かってええで』

と、兄に忠告したのだが、兄は 『オマエが行たくないんやったらオレが行くけどな・・・・』 とどうにも煮え切らない態度をとる。

兄には2人の子供がいて、2人は1学年しか違わず、上の子は1浪したのでこの春から2人そろって東京の大学へ行くこことなった。兄家族が暮らしているのは大阪で、もちろん大阪は田舎というワケではないが、それでも息子2人が東京の大学へ行くというのは大きなことである。あいつらは東京の大学へ行くとその後はおそらく東京で就職し東京で結婚し、そして東京で暮らすのだろう。つまりもう進学のために家を出て行けば一緒に暮らすのはこれが最後になってしまう可能性が高いのである。そう考えれば息子に対して甘くなるのもいたしかたないと思う。

2人しかいない息子が2人とも一流大学に合格して兄も義姉も嬉しそうではあるが、それでも2人そろって東京へ行ってしまい、もう戻ってこないかもしれないのだから内心複雑であろう。そして私はそんな兄や義姉の嬉しそうな顔をみると余計に悲しく感じてしまうのである。