平屋

 近頃の私は千昌夫の「北国の春」のような気分なのである。故郷に帰りたい。しかし帰れない。そんな葛藤を日々続けている。そんなふうに書くと生まれ故郷から遠く離れて暮らしているように思われるかもしれないが、実家と私の家はクルマで20分ほどの距離だ。

 なにゆえ望郷の念が湧いたのかと言えば先日同窓会に出席したからだ。物心付いたころから知っている友人たちとサケを飲み、色々なことを話した。みな大人なので気軽には言わないが私に帰って来いというようなことをいう。

 『親の遺産に土地を貰って、平屋を立てて暮らせよ。大阪で平屋暮らしは贅沢だぞ~!』

 私にそう話す2人の友人は平屋で、しかも3世代同居である。昔ながらの日本の家族の形を都会で実践している。職業はただのサラリーマンなので固定資産税は苦しいだろうが、そんな生活に憧れてしまった。今の私には難しいことだ。あいつらみたいな生き方を選ぶべきだったかなどとも思う。。